Skyrim箱庭DIY

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PCの熱問題と基本的な熱対策について



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Skyrimは直接関係無いですが、今回はPCのお話です。

PCを破損する原因の多くに、熱問題があります。CPU&GPU以外は比較的軽視されやすい熱対策ですが、ヒートシンクやFANを強力にするばかりが熱対策とは限りません。効率の良い熱対策は、色々なパーツの寿命を延ばします。

僕がPCマザーボードやCPUボードを開発をする際に注意している事柄から、温度上昇に関する仕組みと、基本的な対策案をまとめます。 

 

PCの温度測定について

CPUやGPU等のデバイス温度のみが注目されがちですが、正しく温度を評価するには環境温度機内温度の2つが重要で、これらの温度から相対的にデバイス温度を評価します。自宅で厳密に計るのは難しいと思いますが、温度計立てておく位でも目安にはなると思います。

必要な温度情報

環境温度

PC直近の気温です。 設置場所次第ですが、熱が篭ったり排気熱の影響を受けたりで、室温(エアコンの設定温度等)とは差が出ます。

 

機内温度

筐体内部の温度です。筐体サイズ、部品配置、FAN、ケーブル等によるエアフローの遮蔽の影響で、それなりにバラつきます。

後述しますが、これは非常に重要な温度です。PCの熱対策系の記事を検索しても、これを気にしている記事を見たことがない為、一般的にいかに軽視されているかがわかります(失礼ながらショップ店員さんや修理業者さんの熱対策記事ですら、根本的なことを理解していない)。

余談ですが、開発では高精度の温度測定器を使って(1台にセンサーが何十本もついてる)、全ての温度を時間軸で比較できる方式で測定します。センサーの取り付け方次第で温度が激変したり、温度が飽和するまでには時間がかかる(最低数時間は必要で、数十分程度の温度測定では役に立たない)為、とっても手間のかかる測定です。

 

 

環境温度と機内温度の関係

温度というのは綺麗にオフセットが乗るもので、環境温度が5℃上昇すれば機内温度も5℃上がり、デバイス温度も5℃上昇します。下がる場合も同様です。デバイス自体の温度が一番気になる所ですけど、環境温度や機内温度の影響力は非常に大きいということを、踏まえてておく必要があります。

環境温度に対する内部の温度変化

また、

 

機内温度=環境温度+⊿1(℃)

デバイス温度=機内温度+⊿2(℃)

 

といった形で差分を測定すれば、環境温度の変化に対するデバイスの最大温度を推測できます。ただし、CPUやGPUは温度次第でFANを調節する為、必ずしもこの限りではありません

 

・・・ならこんな面倒なことしなくていいじゃない!!

 

はい、CPUやGPUは安心の冷却機構が有る為、ある程度は機内温度が上がってもFANの回転数で対応できます。けれども、これにより他のデバイスにツケが回る可能性があります。

 

 

CPUやGPUの強制冷却による問題と対策

 CPUやGPUの多くは、機内の空気をヒートシンクに吹き付けることで冷却します。構造次第では一部機外に排気されますが、大抵は機内でかき回すだけです。よって、CPUやGPUから奪われた熱は機内へと拡散していくことになります

吹き付けFANによる機内温度の上昇

これは室外機を室内に入れてエアコンを動かしているようなもので、風が直接当たる部分に関しては冷える反面、機内温度が大きく上昇してしまいます

 

吹き付けFANが及ぼす機内温度への影響

負荷や機内温度次第でCPUやGPUは更に熱くなり、FANの回転数も上がっていきます。つまり、より機内に拡散される熱量が増大することになります。

機内温度上昇による悪影響

このワガママな冷却機構(やらないと壊れるので仕方ないですが)のトバッチリを受けるのは、自身で冷却機構を持たないデバイスです。代表的な所では、主にSDRAMHDDです。

※図では省略してますが、North Bridgeには大抵ヒートシンク&FANが付いてるので除外します。

 

最も耐熱温度の低いパーツ

電源ユニットやオンボード電源(マザーボードのDC/DC)等は、結構無茶な機内温度でも動く為(環境温度60℃で高負荷試験1週間、とかやっても動きます)、あまり気にする必要は無いです。SDRAMも実際の所は耐熱温度が高く、表面温度が80℃を超えても動きます。

 

結局の所、

 

PCのパーツで最も熱に弱いのはHDDです

 

大抵のHDDは表面温度で60℃が限界で、2.5インチだと55℃あたりでギブアップするモデルもあったような気も。筐体や環境次第では、十分到達する可能性のある温度です。近い温度で長期間使っていても、寿命がどんどん短くなります。

ちなみにSSDはHDDより10℃ほど余裕があり、熱量も低い為、だいぶ扱いが楽になります。

 

 

具体的な熱対策

特殊なことはせず、基本的な対策案でいきます。大元を改善しないと、小手先の対策をしても大きな効果は期待できないです。

 

環境温度を低くする

とにかく機内温度を可能な限り下げることが、一番効果的です。それには良好な環境温度が欠かせず、これが高いと全ての温度が悪化します。

できるだけ狭い所に詰め込まず、十分なクリアランスを確保してください。特に背面が詰まっていたりすると、非常に良くないです。

筐体のクリアランス

家電の取説に図が載ってますが、こういう理由でクリアランス確保が重要になっています。例えばメタルラックは空気が溜まらないので、良好な環境温度を取りやすいと思います。

某タイマーが発動するケースは、こうしたクリアランス不足が多いんじゃないでしょうか。僕はS社製品はアナログテレビの頃から色々使ってますが、タイマー発動した経験無いです。

 

機内温度を下げる

良好な環境温度を確保したら、次は機内温度をできるだけ環境温度に近づけます。これが全てのデバイスの温度低下に繋がります。背面の排気FANは非常に有効な手段で、暖かい空気は上昇することから上に付けておくと効果的です。後ろを塞がないように!

前面の吸い込みFANは、過度な期待をせずに気休め程度に。そもそもベゼルがあるのであまり流量が期待できません。

機内温度を下げる

 

側面板金を開けっ放しにする

これやってる人多いんじゃないでしょうか。フタの開けっ放し。実際の所、機内温度を下げるには非常に効果的です。昔は板金閉めて綺麗な機内エアフロー作った方が良い場合もありましたが、強力な吹き付けFANで機内を引っ掻き回してる現代、あまり期待できないです。

大きなデメリットとして、FANやヒートシンクのホコリの量が桁違いに増加します。FANの汚れは風量を落とし、ヒートシンクのホコリは放熱性能を大きく下げ、目詰まりを起こしてFANの風を阻害します。CPUやGPUにとって、これらの冷却機構は生命線である為、放置すると破損リスクに繋がります。だんだんグラボの調子が悪くなってきてついに壊れた!みたいな時は、大抵これだと思います。

それと、単純に安全性が低下するので注意してください。落下物による短絡事故(ショート)とか。これは一応忘れずにいてください。仮にも相当の電力を使っていますので。

電波障害や、各種ノイズによる不具合(EMI/EMC)は、目に見える程にはまず出ないでしょう。特に薄いアルミケースとか、電波的にはフタ有っても無くても変わらない気がします。

※あくまで機内温度の低下なので、これでCPUやGPUの温度が下がるとは限りません。元々支障の無い温度(人間の温度感覚ではなく、デバイスのTcase次第)を維持していた場合、フタを開けて低下した機内温度に合わせてFANを緩めます。結果として温度が変わりません。HDDやSDRAM等はしっかり冷えています。

 

マザーボードのネジを全部しっかり止める

劇的な効果は無いですが、GND(電池のマイナスみたいな物で、信号レベルの0基準)強化にも繋がるのでネジは筐体板金に全部しっかり止めた方がいいです。マザーボードにスタッド立てて寝かせて使うのは、玄人っぽいかもしれないですけどオススメしません(基板へアクセスが必要な場合は別として)。

マザーボードのGND層は非常に広く、内層にも何層か(最低でも1層)、まるまるベタのGND層があります。イメージ的には、マザーボードの中に薄い鉄板が入ってる感じ。全ての部品は必ずここに繋がっていて、チップセットなんかも結構なピン数があります。つまり、多少なりとも放熱効果に役立ってます。マザーボードの部品を外したことある人は知ってると思いますが、GNDに繋がったピンは熱が拡散する為、他のピンより半田が溶けにくいです。

マザーボードのネジ穴はGND層に直結しています。これをしっかりと筐体板金に取り付ければ、GND層を冷却する効果も少しは期待できます。ほんと、少しですが・・・

※本来の目的は、ノイズ、静電気等の電気的な対策です。

マザーボードのFG

赤丸部のネジ穴。8本のviaで内層GNDに接続されています。テスター持ってる人は、ネジ穴の導通確認をしてみれば、全部繋がってることがわかります。

 

HDDのクリアランスを確保

筐体次第で難しいかもですが。なるべくHDDの上面を塞がず、空間を作ってやることで HDDの温度状態が良くなります。極力、複数台を上下隣接で積まない等。

5インチベイに変換使って載せると左右の空間も取れますが、直接板金に固定する方が良かったり、振動が増えることもある為、一概には言えないです。

 

CPUやGPUの過剰冷却に注意

既に書いた通り、CPUやGPUから奪われた熱の行き先は、主に機内温度の上昇という形で等価交換されています。

よって必要以上に冷やしすぎた場合、機内温度を無用に上昇させ、トータルではデメリットになる可能性もあります。FANやヒートシンクに溜まるホコリも増えます。

エネルギー保存則がある以上、FANを回しても熱はいきなり消滅しません。許容範囲内の熱はあまり放熱拡散させず、デバイスに篭らせておいた方が良いこともあります。

 

FANやヒートシンクの清掃

環境によりけりですが、年に1度位はチェックした方が良いと思います。機内は思いのほか暗いので、懐中電灯でしっかり確認です。

前述の通り、CPUやGPUの冷却機構は生命線な為、これを放置すると破損リスクに繋がります。よってヒートシンクはある程度清掃可能な形状が好ましく、高い冷却効果を売りにした複雑な形状のヒートシンクには注意が必要です。最初のうちはよく冷えても、メンテナンス性が全く考慮さておらず、ホコリが溜まりだしたら使い物にならない物もあります。

 

 

(おまけ)SDRAM-DIMM用ヒートシンクについて

ヒートスプレッダ、とも。有名ブランドからは、ヒートシンク付きの高価なDIMMが色々と出てますが、これ本当に意味あるんですかね。

 

SDRAM-DIMM用ヒートシンクの必要性

恐らく「玄人っぽい」と思わせて高いメモリを買わせる為じゃないでしょうか。クロックアップ耐性が上がるとか謳いつつ。個人的には霊感商法並だと思っています

DDR3や4を見ても、リフレッシュサイクル次第ですが最大95℃までOKです。PC利用の範疇では、これで問題になることは無いでしょう。

こうした金属部品にはコスト面以外にもデメリットが多く、メーカ製品で採用されることはまず無いです。

 

SDRAM-DIMM用ヒートシンクのデメリット

「静電気対策になる」とか言ってる物もあるらしいですが、まず有り得ないです。むしろ静電気対策(ESD)的には悪化する筈です。

 

ちょっと古いマザーボード(XEON用)ですが、これを例に。すいません今使ってるi5はバラしたくないです(笑)

ヒートシンクを固定する穴が4つあり、GND層に繋がってます。GND層は筐体へとネジ止めされ、アースされます。ヒートシンクに溜まった静電気には、ちゃんと電気的な"逃げ道"がある訳です。

ヒートシンク用FG

電源のアース線を繋いでなくても、金属筐体に固定してあれば十分です。ネジをしっかり止めてください

※意味不明だったら飛ばしてください。

直接「シグナルGND」に繋ぐ方法は賛否あるかと思いますが、ここでは置いておきます。ノイズフィルタ高いですし、市販のマザーボードは大抵直接繋がってると思います。さすがに左下のCPU電源の帰還路になってるGNDパターンとは分離されているので(左下の赤丸)、まあこれ位でも十分かと。

 

マザーボード上のDC/DC電源も同様で、FETのGNDパターンを使って放熱しています。

DCDCの冷却

 

これに対しSDRAM用ヒートシンクの場合、DIMMのスルーホール(ただの穴)に固定しているだけの為、電気的には切り離されています。溜まった静電気の逃げ場がありません

ヒートシンクの真下には、メモリチップだけでなくDIMM基板もあります。そして基板上には、半田の盛られた部品があります。ヒートシンクとの距離はごく近い筈なので、そこめがけて溜まりに溜まった静電気が暴発するかもしれません。しないかもしれません。

メーカ品のPCは電波対策(EMI/EMC)の受検も必要なので、こういったマイナスに働きそうな金属パーツは、よほど後手で対策に迫られない限りはまず使われません。

※DIMMのヒートシンクをリード線で筐体に半田付けしてアースするとかは、余計な電波問題起こるだけなので止した方がいいです。

 

 

以上で終了です!

上手に冷やして長持ちさせましょう。